人前に出ることに恐怖を感じる
ある状況や対象に過度な不安を感じ、その不安感を自分でコントロールできなくなる病気を不安障害といいます。不安障害にはさまざまな種類がありますが、近年、注目を集めているのが社交不安障害です。
社交不安障害は社会不安障害ともいい、英語名“Social Anxiety Disorder”の頭文字をとってSADと呼ばれることもあります。人前で何かをしたり、誰かと話をしたりするときに極度の不安や緊張を感じる病気です。
大勢の人の前に出たり、初対面の人と会ったりするときに不安や緊張を感じるのは自然なことですが、社交不安障害では、その不安が自分でも不合理に思うほど強く、恐怖や苦痛を感じるほどになります。失敗したり恥をかいたりすることを過剰に恐れて、やがては人と接する機会を避けようとするなど、日常生活にまで影響が出てしまいます。
周りからは「そのうち慣れる」「気の持ちよう」などといわれ、また、本人も性格の問題と捉えがちですが、原因の一つに神経伝達物質のバランスの崩れがあるとも考えられており、「勇気を出す」といった精神論で片付けられるものではありません。
その不安は、治療可能な心の病かもしれません
社交不安障害には、限られた場面でのみ症状が出る「非全般性」と、人と接するほとんどすべての状況で症状が出る「全般性」の2つのタイプがあります。
対人関係のストレスは誰にでもありますが、不安があまりにも強くて、苦痛を感じるほどであるならば、社会不安障害を疑いましょう。放置していると、アルコール依存症やパニック障害、うつ病などを併発する恐れもあります。しかし、早い段階で適切な治療を受ければ、症状が改善する可能性は高いのです。