内臓の老化はとっくに始まっている
階段を急いで駆け上がったとき、水たまりを飛び越えようとしたとき、「以前は、こんなことはなかったのに…」と、身体能力の衰えを感じることがあります。皮膚の潤いや張りが減ってきて、年齢を意識する人もいます。
こうした目に見える老化は誰でも実感できるものですが、目に見えない内臓も、20代をピークにその後は着実に衰え始めています。踏ん張りが利かなくなった、疲れが抜けにくくなった、根気が続かなくなった──。単に体力が落ちてきただけと思っているかもしれませんが、実は全て内臓の老化によって起こる現象でもあります。
ただし、見た目も人それぞれのように、内臓の老化にも大きな個人差が見られます。上記のグラフを見ても、30代なのに50代より内臓の老化が進んでいる人もいます。内臓が老化するということは、元気で生きている時間がそれだけ短くなるということ。「内臓年齢」こそ、あなたの健康寿命を決める大切な目安です。
血液検査から分かる内臓の老化度
「内臓年齢」は、健康診断の血液と血圧の検査から、主に動脈硬化による肉体の老化がどの程度進んでいるかを計算することで、予測できます。
全ての臓器に栄養や酸素を送り、老廃物を回収する血液。その通り道の血管を若く保つことが、臓器の若さと健康を維持する重要なカギです。
そこで、動脈硬化の危険因子である血中脂質、血糖、血圧に、代謝機能に関わる肝機能や腎機能の検査数値を加味すると、おおよその「内臓年齢」が分かります。
内臓が老化してくると体にこんな変化が現れやすくなります
「抗酸化」と「抗糖化」が、 内臓年齢を若く保つキーワード
「酸化」とは、一言で言うと「活性酸素」で体内の細胞が傷つけられることです。私たちが生きていくために不可欠な酸素ですが、その一部は体内で活性酸素に変化します。体には活性酸素の害から守るための酵素が備わっていますが、この酵素の働きは加齢とともに低下していきます。そのため、酸化した血中の悪玉コレステロールが血管をむしばんで、動脈硬化が一気に進んでしまう危険があります。
「糖化」とは、たんぱく質と糖質が結びつく反応により、たんぱく質が劣化することです。人体のほとんどはたんぱく質からできていますから、臓器をつくるたんぱく質が劣化すると、老化に直結します。
上記のグラフで示したリポフスチンは、酸化した脂質と糖化したたんぱく質の複合体で、酸化と糖化は同時に起こる場合が多いことが近年の研究で分かっています。そこで、日常生活では、忍び寄る酸化と糖化から身を守るための意識と工夫が重要です。
まずは下に挙げた3つの生活習慣から始めてみてください。その積み重ねの成果は、来年の健診数値に表れるはずです。
酸化と糖化から内臓を守る3つの生活習慣
日本大学医学部卒業。杏林大学教授を経て現職。専門の「診断学」を活用して病気を診断、患者一人一人に適した治療を心掛けている。『健康度チェック』(学研)、『検査のすべて』『病院の検査数値早わかりハンドブック』(以上、主婦の友社)など著書多数。