日本列島を100㎞×100㎞の格子で区切り、このうち1カ所でも最高気温が30℃を超えた日を「真夏日」として数えています。
出典:国立環境研究所/東大気候システムセンター/海洋研究開発機構
年々、熱中症の危険が増す日本の夏。
炎天下で働く人や運動をする人は要注意。
また屋内でも、高齢者や小さな子どもは要注意。
しかし、若い人でも油断すれば、思わぬ落とし穴から熱中症に。
家族みんなで、熱中症予防の正しい知識を!
暑くなると、私たちの体は汗をかいたり、皮膚の血管を拡張させたりして、体の熱を放散し体温を調整しています。しかし、高温多湿の環境に長時間いると、熱の放散が減少し、汗の蒸発も不十分となるため、体温はさらに上昇。すると、体は熱くなった体内の血液をどんどん体の表面に集め、皮膚から放熱して冷やそうとします。いわば、車のエンジンオイルを冷やすラジエーターの役割を果たすわけです。
ただ、体内の血液量は決まっているので、皮膚に血液が集中するほど、脳や内臓への血液が不足します。その結果、さまざまな障害が現れるのが「熱中症」です。高温多湿の環境下では、
屋内外を問わず、誰にでも起こり得るので、決して油断はできません。
スポーツや労働時の熱中症は主に炎天下で発生していますが、 日常生活では室内でも炎天下とほぼ同じ程度起きています。
出典:2010年日本救急医学会
特に都市部では、コンクリートやアスファルトなどに蓄積された太陽光の熱が放熱されるなどして、気温の高い部分が島状にできる「ヒートアイランド現象」が広がり、熱中症はますます発生しやすい状況です。もう一つ知っておきたいのは、都市化により私たちの体温調節機能そのものが働きにくくなっているということです。
夏でも冷房の効いた涼しい室内で長い時間を過ごし、あまり体を動かさないなど、汗をかく機会が少ない暮らしをしていると、汗腺の働きが低下しやすく、暑い環境での十分な発汗ができません。特に高齢者は汗腺の数が少なく、皮膚が気温の変化を感じにくくなっているので要注意です。
また肥満の人は脂肪があたかも断熱材のようになって、熱をうまく放散しにくい上、生活習慣病の予備群でもあり、熱中症を発症しやすいともいえます。
熱中症は、30度を超える真夏日に多く発症しますが、実は、気温自体はそれほど高くなくても、梅雨の合間に急に暑くなる日や、梅雨明けの蒸し暑い日にもよく起こります。
そもそも人間の体は、徐々に慣らすことで暑さに強くなることができます。これを「暑熱順化」といいますが、こうした暑さへの適応には数日から2週間程度かかるといわれています。梅雨の間
は、体がまだ暑さに十分に慣れていないため、梅雨が明けて急に蒸し暑くなると、その変化に
体温調節機能がうまく対応できず、熱中症になりやすいのです。
ですから、熱中症を防ぐには、暑くなり始める前から、暑さに備えた体づくりをしておくことが大切。
そのための予防対策を、下部で紹介します。
汗を多くかいたときは、体から水分とともに塩分も失われます。水分補給は大切ですが、水ばかりを摂取していると、血液中のナトリウム濃度が低下し、倦怠感やこむらがえりが起こる場合もあります。ミネラル分も補給できる経口補水液やスポーツドリンクがおすすめです。
※水分と電解質を素早く補給できるようにナトリウムとブドウ糖の
濃度を調整した飲料。ドラッグストアなどで入手できます。
「救急車を呼んだほうがよいのか」「今すぐ病院に行ったほうがよいのか」など迷った場合には、東京消防庁救急相談センター(#7119)へご相談ください。
暑さへの適応力は、日常生活の工夫によってひと足早く身につけることができます。そのために大切なのが、汗をきちんとかく習慣。日頃からウォーキングなどの運動や入浴などで汗をかく機会を増やしておきましょう。しかし、汗で水分が出れば、血液が濃くなります。水分は"早め"に、かつ"こまめ"に補給しましょう。発汗がスムーズだと、突然の気温の上昇にも対応しやすいので、熱中症にもかかりにくくなります。
もちろん毎日の体調管理も大切。十分な栄養と睡眠に加えて、室内の温度・湿度管理を。冷房により室内と外気温との差が大きいと、出入りのたびに体へ負担がかかります。室温は28度前後に設定し、ドライ機能を上手に活用しましょう。高齢者は室温の上昇に気づかないこともあるので、部屋に温湿度計を置いて、確認するとよいでしょう。
なお、熱中症が疑われるときには、何よりも迅速な対応が重要。判断が難しいと思ったら、右記の東京消防庁救急相談センターに連絡を。