大事な場面で緊張してしまう

会

議やスピーチの場面などで、不安のためにガチガチに緊張してしまい、しどろもどろになってしまった経験は誰でも一度はあるでしょう。堂々としている人と自分を比べ、うらやんだり惨めな気分になったりすることもあるかもしれません。

一瞬で緊張を吹き飛ばす、などという都合のよい方法は存在しませんが、事前に取り得る対策はあるはずです。例えば、不安や緊張を感じたら、それは「準備するべし!」というサインだと前向きに受け止めて、今できる準備をしっかりすること。話す内容の詳細なメモをつくる。リハーサルを何度もする。誰かにチェックしてもらう……。「失敗したらどうしよう」と不安がるだけで終わらせず、失敗しないために今できることを考え、心に抱えた不安を原動力にパフォーマンスを上げるのです。特に、最初の部分だけでも繰り返し繰り返し練習することをおすすめします。出だしがスムーズになるだけでも、幾分緊張がほぐれるはずです。

陥りやすいのが、「失敗したらどうしよう」という不安が強過ぎて、悪い結果のシミュレーションに心が傾いてしまうこと。「失敗して笑われる」「クビになってしまうかも……」など、不安を膨らませるだけで心がいっぱいになってしまうこともあるでしょう。もしもひたすら悪い結果の想像に終始している自分に気付いたら、今できることに集中するよう頭を切り替えて。不安がっているだけでは準備のための貴重な時間が減ってしまうだけでなく、自分で自分の心を萎縮させてしまうことにもなりかねません。

そもそも、不安は悪者とは言い切れません。不安があるからこそ、私たちは下調べをし、準備をし、いろいろなことに備えられるのです。本番で反省点があれば、自らを振り返り、そこから学び、成長することにもつながります。もしも不安が一切なければ、本来なら感じられる程よい緊張感やその後の達成感、成長などもなくなってしまうかもしれません。

不安があるからこそ、しっかりと準備ができ、結果につながる。そう心得て準備と成功体験を何度も繰り返していくうちに、次第に心が楽になってくることでしょう。

イラスト

しもぞの そうた 1959年生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の心理幹部となり、陸上自衛隊衛生学校メンタルヘルス教官としてメンタルヘルス、自殺防止、カウンセリングなどの教育に携わる。2015年退官。現在は惨事ストレスに対応するメンタルレスキューインストラクターとして活躍中。『自衛隊メンタル教官が教えてきた 自信がある人に変わるたった1つの方法』(朝日新聞出版)など著書多数。

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