「仕事を任せる部下がいない」「部下が育たないから自分の負担が減らない」̶。管理職の方からこのような悩みを聞くたびに、「任せないからいつまでたっても部下が育たないのではないですか?」と聞き返してしまいます。
このように負のスパイラルに陥ると、膨大な仕事を上司一人で抱え込むことになります。
また、部下からは「あの上司は、いつまでたっても自分に任せてくれない。自分は信用されていないんだな」と思われているかもしれません。
同期の中でもいち早く管理職になった優秀なAさん。しかし、仕事を上手く部下に振れず、さらに管理職ならではの仕事をいっぱいに抱えていました。部下への割り振りを考えるだけでも一仕事で、かなりの時間を費やしていたといいます。
ある時、時間に余裕がなかったため、仕事の割り振りも考えないまま部下を集めることに。
「こういう仕事があるんだけど、今から割り振りを決めたい」と言うと、Aさんを尻目にメンバー同士で調整して、あっという間に割り振りが決まりました。
「今まで部下が未熟だから、自分が全部決めて伝えなくてはと気負っていましたが、部下に相談すれば彼らが自分で考えてくれるものなんですね。考えてみれば、私から『これを担当して』と与えられた仕事より、自分から『私がやります』と引き取った仕事の方がやりがいもありますよね」
Aさんはこのように語り、もっと部下を信頼して任せようと思ったそうです。
部下が育っていないから仕事を任せられないのではなく、いつまでも任せないから部下が育たない。「任せる部下がいない」と悩んでいる方は、そう考えてみてはどうでしょう。
上司がすべきことは、いつまでも任せられないといって仕事を抱え込むのではなく、部下に仕事を割り与え、経験・成長させ、成果につながるようやる気にさせること。部下は思った以上に自立していて、上司はもっと部下を信じてよいのだということを学べるよい例です。
上司と部下の例でお話ししましたが、先輩と後輩でも親と子でも基本は同じことです。
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