臨床心理士、心理学博士 関屋 裕希せきや ゆき

東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野客員研究員。早稲田大学第一文学部心理学専修卒業、筑波大学大学院人間総合科学研究科発達臨床心理学分野博士課程修了後、2012年より現所属にて特任研究員として勤務。専門は産業精神保健(職場のメンタルヘルス)。業種や企業規模を問わず、ストレスマネジメントに関する講演、コンサルティング他、執筆活動を行っている。

涙に隠された3つの効能

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泣きたくなってもぐっとこらえて我慢する。

私たちはなぜ心のままに涙を流さないのでしょうか。涙にはあまりいいイメージがないから?それとも、泣くのは弱さの表れで恥ずかしいことだと考えているから?もちろん我慢することが必要な時や場所はありますが、実は涙には隠された効能があるのをご存知でしょうか。

まず1つ目は、心がすっきりする効果で、心理学では“カタルシス効果”と呼ばれます。自分の悩みや不安などを言葉にして人に話すことで苦痛が和らぐことを指しますが、涙を流すだけでも同様の効果を得ることができます。気持ちを自分の内にため込まず、涙という形で外に出すことで、すっきりした感覚になるのです。「泣いたあと何だか気分がよくなった」「すっきりした」というのはこのためです。

2つ目は、リラックス効果です。涙は、副交感神経というリラックスモードをつかさどる自律神経が働くことによって流れます。ストレス状態が続いてなかなか寝つけないときには、あえて感動モノの映画や本に触れ、その世界に入り込んで涙を流すといいでしょう。そうすることで、自然と体から力が抜けて、緊張モードからリラックスモードに切り替えることができます。

3つ目は、サポート引き寄せ効果です。私たち人間は、家族や友人が泣いていたら、「大丈夫かな?」と心配したり、「何か助けになりたい」という気持ちになったりするものです。人前で泣くなんてみっともないと思われるかも……と不安になる人もいるでしょうが、涙を見せることで周りの人からのサポートを引き寄せる効果もあるのです。どうしようもないほど悲しいときや苦しいとき、我慢せずに涙を流してみたら思わぬところから優しい手が差し伸べられるかもしれませんよ。

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とはいっても、やっぱり人前で泣くのは難しい!そう思ったら、まずは次のように口に出すところから始めるのがいいでしょう。

「何だか泣きたい気分」

「涙が出そうになるくらいつらいことがあった」

泣きたい気持ちを誰かに伝え、それを受け止めてもらうことで、少しずつ「泣いてもいいんだ」と思えるようになります。そうして人の優しさに触れていくうちに心がふっと緩んで、自然と流れる涙があるはずです。

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