臨床心理士、心理学博士 関屋 裕希せきや ゆき

東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野客員研究員。早稲田大学第一文学部心理学専修卒業、筑波大学大学院人間総合科学研究科発達臨床心理学分野博士課程修了後、2012年より現所属にて特任研究員として勤務。専門は産業精神保健(職場のメンタルヘルス)。業種や企業規模を問わず、ストレスマネジメントに関する講演、コンサルティング他、執筆活動を行っている。

生活の中に「夢中」を取り入れる

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皆さんが最近、「夢中になっていたら、あっという間に時間が経っていた」という経験をしたのはいつですか?私の場合は、料理教室でロールキャベツを習っていたときでした。さあ作ろうとキッチンに立ってから、鍋にふたをして30分煮込みましょうと言われるまでが一瞬のように感じられました。

この「夢中になっていたら、あっという間に時間が過ぎていく」という現象は、心理学では「フロー状態」と呼ばれています。「フロー」という言葉は、この現象について人々にインタビューを行った際、たくさんの人が「流れ(flow)」という表現を使ったことに由来します。

フロー状態は、仕事や料理、スポーツなどのさまざまな場面で体験できますが、普段の生活の中で、意識的に「フロー状態」をつくることで、私たちのやる気が引き出されて、毎日をいきいきと過ごせるようになることが分かっています。

フロー状態をつくり出すカギ、それは「適度な難しさ」だと言われています。何かに取り組むときに、それが難しすぎると人は不安になりますし、逆に簡単すぎると退屈になります。例えば、料理教室で「子羊のパイ包みマリアカラス風を作ってください」と言われたら、そんな本格的な料理を自分が作れるだろうか……と不安になりますし、「卵かけごはんを作ってください」と言われたら、何だそれだけか、とあまりやる気がおきません。

そこで、皆さんに取り組んでみてほしいのが「難易度」の調整です。目指すのは、「ちょっと難しいな。でも、頑張ればできそう」というくらいの難易度。先ほどの料理の例えでも、「これまで食べたことのないような新しい卵かけごはんを作ってください」と言われたら、よし、ひとつやってみよう!という気になりませんか?

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仕事でいえば、新しい企画を出してみよう、これまでより質の高い物を作ろう、と自分で目標を設定したり、プライベートでは、休日にいつもより少しだけ負荷を上げた運動に挑戦してみたりと、自分の能力を最大限に使えば達成できる程度のチャレンジがフロー状態をつくり出し、楽しさの発見や自己成長につながります。

こんな風に、いつもの仕事や趣味に新しい要素を加えて、生活の中に「夢中になったらあっという間」な時間をつくり出してみませんか。

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